北欧神話の本
北欧神話の世界―神々の死と復活
アクセル・オルリック『Om Ragnarok』の完訳。初めて北欧神話の終末論《ラグナロク》を総合的に論じた著作。
すでに1世紀も前の著作だが、未読ゆえか今なお驚くべき新鮮さを保っていた。著者が民俗学に精通しており、北欧のみならず、ケルト、アルプス、フィン−タタール人などの民間伝承からラグナロクに共通するモチーフを引いて比較を試みるところは知的好奇心を十分にくすぐってくれる。たとえばラグナロクの描写で登場するナグルファル(人間の爪でできた船)。この全くマイナーな記述に対して、収集されている民俗学的証拠の豊富さ! また初心者として意外だったのは、スノリを重用せず、もっぱら古エッダの検討にあたり、にもかかわらずラグナロクの描写著しい『巫女の予言』に対して厳正な文献批判を行っていること。しかし、それによって、ラグナロクがキリスト教に由来するのではないかという強烈な議論から救っている。もっとも細部についてはキリスト教に由来すると認めている部分も少なくない。それでも本書は当時としては(あるいは今なおも)画期的だったのだろう。 解説では訳者の尾崎和彦氏がオルリックの学問と背景、研究とその成果についてわかりやすく話してくれ、あとがきとともに氏の情熱のほどがうかがえて、好感が持てる。 北欧神話研究における古典的名著。原註、索引あり。
日本で出版されている北欧神話に関する書籍の多くが文学的視点から書かれているのに対し、本書は論理的考察により神話の由来を明らかにしようと試みている。北欧神話の真の入門書と言える。
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