トスカーナの本

ふたりのトスカーナ (竹書房文庫)

 
意図的な「題名のすり替え」(トロイの木馬?)(2004/10/20)
訳本『ふたりのトスカーナ』の原作、イタリア語の自伝的小説、の原題を直訳す
れば『空が落ちてくる』である。「意外な事件が降りかかってくる」ことを読者
に予感させるようなスリリングなタイトルである。実は、この邦訳は原作の直訳
ではなく、ドイツ語訳を元にした「孫訳」(2番煎じ)である。原作は戦争孤児
になったイタリア娘(被害者)の観点から書かれている。ところが、ドイツ語訳
は、このイタリア娘の養母一家(ユダヤ人)を虐殺したナチス・ドイツ将校(加
害者)の観点から語られている。というのは、ドイツ語訳者は、独裁者ヒットラー
の片腕であった人物の姪にあたる女性であったからだ。原作が出版されたのは1
961年であった。すぐ翌年、英訳が出版された。ドイツ語訳はその後なかなか
出版されなかった。この事件の加害者であるドイツ人の読者たちにとって、この
醜い事件をすなおに「事実」として受け入れる心の準備をするために長年の歳月
がかかったからだ。ついに1999年になって、ドイツ語版が初めて出版された。
そして、それがきっかけになって、2001年にこの原作がイタリアで映画化さ
れて、世界中に感動を呼び起こした。その映画が日本で初公開されることになっ
た2003年の初めに照準を合わせて、この邦訳が出版された。しかし、この
「孫訳」の段階で、明らかに意図的な「題名のすり替え」が起こった。題名『ふ
たりのトスカーナ』にも、訳本の表紙(あどけない笑みを見せる2人の少女)に
も、悪い知らせを予感させるものは微塵もない。もし私が訳者だったら、たとえ
「意訳」はしても原作により忠実な、『ある夏、突然に』あるいは『晴天から霹靂』
というようなタイトルを選んだだろう。旧日本軍は太平洋戦争中、中国大陸や南方
で、侵略を繰り返し、罪なき住民を大量虐殺した。従って、その歴史的事実を背負っ
た戦後に生きる我々日本人読者は、ドイツ人読者と同様な(加害者の)立場にある
はずだ。しかし、この邦訳者は、それを、まるで「ひた隠す」ような題名を選んだ。
敢えて「原作」、あるいはそれに忠実な「英訳」を邦訳の原本にしなかったこと
にも、意図的な選択が感じられる。従って、この邦訳が原著者の気持を、どれだ
け忠実に伝えているか疑わしくなる。私は、この邦訳よりは、むしろ原作のイタ
リア映画をじかに観賞することをお推めしたい。          丸田 浩
 
孫翻訳(2003/06/02)
40年近く前の、イタリアとアメリカでのベストセラーを、映画化を機会に日本で出版。イタリア語の原書を訳したドイツ語からの日本語訳なので、細かい表現へと立ち入れないのが残念。イタリア映画のみならず日本映画・文学でもよくある、児童戦争文学ですが、日本での同種のジャンルでは、軍国主義に悪を帰そうとする結論が多勢をしめるが、世界への虚無的な表現はあっても、安易な反戦やファシズム否定に流れないのが、文学として健全で大変よろしい。
 
ふたりのトスカーナ (竹書房文庫)
タイトル:ふたりのトスカーナ (竹書房文庫)
定価:\620
発売日:2003/01
著者:ロレンツァ マッツェッティ
出版社:竹書房
形態:文庫
合計1,500円以上で送料無料!
※ 価格等のデータは日本時間 2008/08/28 05:04:34 時点のものです。

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