フィレンツェの本
フィレンツェだより (ちくま文庫)
リルケの原文はドイツ語で書かれている。森はそのフランス語訳を日本語に訳している。つまり、これは重訳の産物である。しかし、そんなことはつまらないと思わせるほど、この本は魅力的だ。リルケの青春の書が40歳代後半に入った一人の日本人に与えた衝撃。「リルケに就いてはそのレゾナンス(私の内部の共鳴)を語ることしか私にはできない。」と森は述べている(「リルケのレゾナンス」)。
内容は芸術についての随想が中心になっている。とにかく、文体が雰囲気満点で魅力的である。「バビロンの流れのほとりにて」に比べると客観性が勝った文章だが、それが硬質な、それでいてしなやかなリルケの(そして森の)感性の動きにフィットしているように思える。美の息吹が感じられる。二宮正之氏の解説もありきたりではなく、森有正への共感に満ちたものである。
フィレンツェの本フィレンツェだより (ちくま文庫)
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