ミラノの本
須賀敦子のミラノ
著者のまるで須賀敦子を模倣したような文体は
この本を読む須賀敦子ファンにとってもう読むことのできない 彼女の新作を読んでいる、と錯覚させてくれるのかもしれない。 美しい写真と共に、須賀敦子の歩いたミラノを(エッセイにでてくるバールやジェラート屋、 夫と共に働いていた本屋はともかく、夫の家族のお墓の写真や彼女に片思いしていたらしい友人の話まで) 「公表した」この本は、見た感じは上品で須賀敦子の作品集の持つ 雰囲気をこわさずにはいるものの、内容としては少々彼女の私生活に つっこみすぎた感が否めなかった。 もっともそれが目的のシリーズなのかもしれないけど こういったものを世に出すのには早すぎた、ということなのかも。 須賀敦子の大ファンで彼女のミラノ!生活を覗きたい、 でも機会が作れないという人、あるいは著者自身のファンにはいいかもしれない。 私的には、時折目に付く大竹昭子の感想(須賀敦子に直接関係のない) が目に付いて読みにくい。読みたかったのは彼女のミラノではなく あくまでも須賀敦子の足跡のついたミラノなのだから。
大竹昭子というフィルターを通して語られる須賀敦子の世界。須賀敦子がミラノですごした31歳からの11年間は、愛と死、孤独と自由。まるで凝縮されたエッセンスのように濃厚だ。
50代の著者が自分のペースですすめたミラノ取材は、ハラハラする冒険的要素はない。それがかえって、ミラノでのゆったりとした時の流れと、人なつっこいイタリア人を強調している。撮り下ろしの写真も効果的に使われていて、須賀敦子への想像はふくらむ。 40年前にイタリアにひとりで飛び込んで、活動した日本人女性の孤独。それは悲愴なものではなく、宇宙のなかの星のように、小さくても輝きをもった孤独だった。その事実は、人生をどう生きるかという、現代人がかかえている問いへのヒントとなることは間違いないだろう。
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