シチリアの本
シチリアの春―世紀末の文化と社会 (朝日選書)
シチリアについて(1)パオロとヴィットリオのタヴィアーニ兄弟が1984年製作した映画「カオス・シチリア物語」を軸にしてシチリアの伝統、文化、伝説について考察している。その当時の大土地所有制度下における農民と地主との対立にも触れている。(2)黄金期のパレルモにおいて一世風靡した商家フローリオ家の歴史と最も栄えていた4代目のイニャツィオ・ジュニアの時代に焦点を当てている。イニャツィオの時代はパレルモのアール・ヌーヴォ様式の時代と重なり、彼はそのパトロンでもあった。(3)シチリア人芸術家と結婚し、パレルモに住んだ日本人女性画家のラグーザ・玉とその時代について。夫ヴィンチェンツォ・ラグーザと供に美術学校を建設した彼らの芸術活動について語っている。シチリア島は今やイタリアに付属する小さな島で、風光明媚であるが、経済的には最低レベルであり、マフィアの活動の中心地であり、治安が悪いというイメージが定着している。この本を読むにあたって、シチリア島は歴史的観点から見れば、いろいろな文化が混在しており、一時期は本島より独立し、国際的に花開いた時期があったことを知った。この(2005年)夏、南イタリア、シチリア島を観光で訪問する予定なので、この本から得た新たな視点から、シチリア島を見学してきたい。
現代では、シチリアというとマフィア!っとすぐに頭に浮かんでくる。
しかしおよそ1世紀前ではシチリアは国際都市としてイタリアの中で政治的にも、また文化的にも重要な箇所であった。 この本では、まだマフィアがほとんど存在しなかったおよそ1世紀前のシチリアを、タヴィアーニ兄弟が監督を務めた映画『カオスシチリア物語』とその原作であるピランデッロの短編との比較や、当時のシチリアの実業家であったフローリオ家の栄華と没落の様子、そして日本からシチリアに渡ったラグーザ・玉とその夫ラグーザの足跡を追うことなどを通して我々読者に示してくれている。 この本を読むと、いつかはその繁栄も終わりを迎えるのだという「はかない美しさ」を感じずにはいられない。さながらヴィスコンティの映画『山猫』を見た後のような気分になった(←もちろん、この作品についても言及されている!)。 それはおそらく、政治や文化の中心地からは遠ざかってしまい、マフィアが存在する島としてのイメージがすっかり定着してしまった現在のシチリアを知っているからこそ抱く感情なのだろう。 また、この本の中では、日本からイタリアへ渡り、ラグーザ・玉およびラグーザに関して、その作品がほとんど残されておらず研究もあまりなされていないことなどから、ラグーザの故郷は彼らに冷たいという印象をうけた…と著者は述べており、さらなる今後の研究の必要性にも言及している(この本が書かれた頃だと思うので、およそ10年前の時点であろう)。しかし、つい先日、某テレビ番組でラグーザ・玉に関してシチリアで再評価がなされていると述べられていた。よって、今後、1世紀前の日本とイタリアの接点であったラグーザ・玉や夫ラグーザに関しては、さらに様々なことが明らかになるのではないかと思う。 今まで想像だにしなかった、可憐で豪華なシチリアの側面を知ることができてよかった。
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