沢木耕太郎の本

天涯〈3〉風は踊り星は燃え (SWITCH LIBRARY)

 
魅力的な写真集であり、言葉が重みを持って伝わってくる書(2009/06/27)
何百枚と掲載された写真からは、被写体となった人たちの生き様が伝わるように感じられます。「深夜特急」でもカメラだけは手放さなかった沢木耕太郎ですから、写真を撮ることは旅の一部で切り離せない行動だということが分かりました。

ただの風景写真でないことは確かですし、ポートレイトのようでありながらもっと人間臭い写真です。沢木耕太郎の人間観察の深さが伝わってくるような撮り方ですし、被写体の気持ちが分かるような写真でした。心象風景といってもよいような写真の連続を眺めているだけで、筆者と一緒に放浪の旅に出ているような錯覚に襲われます。

何を撮る、というより、沢木の心の中を表すような被写体を探し求めての旅の結果でもありましょう。

146ページの言葉が印象的でした。「私が若いときの旅の話をする」と、彼(ドイツ人)は短く言った「遅すぎる」。「旅には旅の適齢期がある、と彼は言いたかったようだった。」
この会話に旅の持つ意味と人生との関わりが見え隠れするようです。

本書のラストの言葉「私は帰らない」に沢木の生き様と旅の姿が理解できます。
常に旅人であり続けることの難しさを知る人の言葉の重みが、掲載された写真の凄みとリンクしながら押し寄せてきました。その意味において若き日の「深夜特急」の旅が異彩を放ち、時代を超えて愛されていくのでしょう。

1998年から2002年までの軌跡として、その間の写真ですから、彼の旅はまだ終わっていないわけです。
 
共感と嫌悪(2004/04/08)
 本シリーズの第一が出たときはやはり衝撃的で、『深夜特急』が猿岩石によって逆に遡及的に話題になってしまい、人生の後半に入ったこの著者に、新たな、そして、本格的な旅がまたはじまろうとしているのだろうか、と想った。

 今回の第三では、フランス、ヴェトナム、中国、オーストラリア、アメリカ、ブラジル、カナダ等の各地を旅しながら、第一・第二と同様のスタイルで、自らの旅に関する洞察と(本質的に旅をしていた著者達によって書かれた)小説等の書籍からの引用が断章形式で織り交ぜられて、本書を読んでいる間、読者はたまたま機上や列車内で著者と隣合わせたようにして、一時、transition(移行)の時空を共有することになる。

 著者はこのシリーズを、やはり(私的な)アルバムだ、と書いているが、私にとってこの本は、第一に続いて共感の多い本だった。「成熟」しない「諦念」、また旅先でもたらされる「変化」、いや東京の日常生活の中でさえ齎される「自分がどこにいるのか分からなくなる」旅などについての洞察は、やはり啓発的だし、本当に魅力的な一つの人生の可能性に違いない。

 けれど、この私的なアルバムの写真が撮影された、1998年から2002年の間、幾つもの位相で世界の現実が動いていた。それを振り切って自らの世界に没入するその想像力もたいしたものだと思うけれど、そこに没入しきってしまう自分を嫌悪する眼差しがどこかにある。おそらく、自らがそう没入しきれない、その想像力への嫌悪が、本書をなおさら魅力的にさせるのであろう。
 
なぞる、そして復讐(2004/01/24)
 ずっと待ち続けていた第3弾。真っ黒の表紙を見たとき、おおっ!と感動してしまいました。

 中身は、いつもと変わりません。ただ今回はどういうわけか、あまり共感できる文章がありませんでした。むしろ、「え、そうですか?」と

呟いてしまうような、あまりにも主観的な文章が目立ったように思います。天涯1,2が大変完成度が高かったからでしょうか。それともこの第3弾の出版自体が「天涯1・2の続編として、いつかは出版されるべき要望に応えねばならない」という宿命を背負っていたからか。本の中にあまり自由さがない。むしろ天涯1・2の影に追われて食いつぶされてしまったのでは、と感じます。

 ひょっとしたら今の沢木さん自身が、天涯とはぜんぜん違うところに位置しているのかもしれません。「旅はなぞれない。なぞろうとしたら復讐される」とかつて沢木さんは書きました。もう「天涯」とは別のところにいる沢木さんが、今回「天涯」に戻ってそのスタイルの旅をなぞろうとした、そしてその旅に復讐された。そんな感じがしてしまいました。

 無論、これは素人の勝手な解釈です。まだ若い私が彼の世界を理解できていないだけかもしれない。しかしそれを差し引いても、あまり納得はできませんでした。
 
天涯〈3〉風は踊り星は燃え (SWITCH LIBRARY)
タイトル:天涯〈3〉風は踊り星は燃え (SWITCH LIBRARY)
定価:\3,360
販売価格:\3,360
発売日:2003/12
著者:沢木 耕太郎
出版社:スイッチパブリッシング
形態:単行本
在庫状況:在庫あり。
合計1,500円以上で送料無料!
※ 価格等のデータは日本時間 2009/08/14 05:00:14 時点のものです。

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