ローマ人の物語の本

ローマ人の物語〈11〉―終わりの始まり

 
皇帝の存在理由とはなにかを考えさせられる書。(2007/09/11)
皇帝により任命された司令官というものは、「何であいつなんだ!」と言われても、「仕方ないじゃないか、皇帝が決めたことなんだから!」と言えるのだろうが、いくら有能でも、昨日までの同僚が突然、自分で手を挙げて、訳のわからないまま皇帝になったのでは、「何であいつでないといけないのか!」という「存在理由」が見あたらない。
迷走を始めたローマ帝国でも、混乱を収束させるべく、有能な軍人出身の皇帝が帝位につき、期待通りの働きをするが、彼らは、たびたび、実にあっさりと部下によって殺されてしまう。
つまり、彼らは軍人としての能力には敬意をもたれていても、皇帝して敬意はなかった・・・、つまり、これこそが、「何であいつなんだ!」ということへの答え、「存在理由」だと思う。
では、皇帝になる為の「存在理由」とは何か?と言えば、それが「血縁」だと。
「何であいつなんだ!」、「仕方がないじゃないか!皇帝の娘と結婚したんだから!」というものである。

権力者に「権威」を与えるためには、皆が納得する「存在理由」が必要だと考えれば、ローマ皇帝の「血縁」に代わって、今のアメリカ大統領にある存在理由は何か?
言い換えるならば、「権力を持つに当たっての正当性」は何か?といえば、それが、「選挙」なのだと。
すなわち選挙とは、単に一番有能な人を選ぶだけの行為ではなく、選ばれた人に、「なぜ、あいつなんだ!」という正当性を与えるものでもある・・・ということに思い当たった。
だが、ここで、また、壁にぶつかった。
ローマ世界には、選挙という概念が存在しなかったわけではないからである。
となれば、なぜ、ローマ人は皇帝を選挙で選出することをせず、正当性の担保を血縁にのみ頼ったのか。
これは、この時代あたりから、ローマの元老院という物があまり機能しなくなってきていたことが大きいのだろう。
 
マルクス・アウレリウス帝をどう評価するか。(2005/12/25)
200ページをさいてマルクス・アウレリウス帝の時代を描いている。初代アウグツスを除いて、一番多くのページ数を割いている皇帝といえるのではなかろうか。それだけ論点の多い皇帝なのだろう。たしかに、ローマ帝国衰亡の始まりは、蛮族の襲来の態様の変化、ローマ人がローマ人らしさを失い始めたこととあわせて、帝の決して完璧ではなかった諸政策にその原因を求めることができるのかもしれない。しかし、病弱な身体で、そして軍事の経験のなさという弱点を抱えつつ、マルクス帝は前線に踏みとどまり続けた。後の皇帝の多くが名前の一部にマルクス・アウレリウスを使ったように、たとえ後の評価では賢帝とは言えなくても、多くの人のリスベクトを集める、責務に忠実な皇帝らしい皇帝だったのだろう。だからこそ、作者は騎馬像のカラー写真を冒頭にかかげ、騎馬像にまつわるエピソードを紹介し、また、マルクス帝の章の最後に、カシウス・ディオの感動的な、帝を評する一文を紹介したのだろう。

なお、マルクス帝からコモドゥス帝にかけては、傑作映画「グラディエーター」の時代。いくら史実とは異なる脚色がなされているとはいえ、視覚・聴覚でこの時代の雰囲気を味わいながら、この本を読めば、至福の時間を過ごすことができるだろう。(ついでに言えば、グラディエーターのサントラ盤もお薦め)
 
何故「終わりの始まり」が五賢帝の最後の一人で始まるのかよく分かります(2005/02/06)
 何故五賢帝の最後の一人、哲人皇帝としても名高いマルクス・アウレリウスの記述から始まるこの巻。
 その理由がよく分かります。
 通説に喧嘩を売ってるというほどではないにしろ、独自の視点で書かれているのがやはり面白い。
 塩野七生独自の視点は皮肉がこもってはいるのだけど、それなりに暖かみがあります。
 もっとも、本当に無能な人物に対しては、手厳しいのがさすが。
 
苦悩する皇帝 マルクス・アウレリウス(2004/01/24)
前帝時代とはうってかわって,ドナウ川・ユーフラテス川の両防衛線で苦戦するローマ軍。平和すぎたアントニウス・ピウス帝時代は,ローマ軍から実戦能力を奪ってしまっていたのだ。軍事的才能に秀でているとは言えないものの,きまじめな性格から常に最前線で指示を下し続けるマルクス・アウレリウス。しかし,ドナウ川戦線の安定を確立する直前になって,彼の脆弱な肉体はついに限界をむかえる・・・。
苦しい時代にあっても帝国のために奮闘する皇帝や将軍たちのスピリットは健在です。しかし,時代の流れはさらなる悪化へ。次巻はどうなってしまうのでしょうか。
 
塩野さんが古代の末期を描く・・・新たな挑戦のはじまり。(2004/01/18)
塩野さんと古代末期。似合わない取り合わせに、葛藤を見る。

作家としての感性と古典資料だけをもとにして、ローマ人礼賛の塩野さんはこの「すべてが見かけ通りではない時代」をどうやって「物語」として描くのだろう。
勃興期や英雄のサクセスストーリーが面白いのはむしろあたりまえ。
けれどこれからは、ローマ人とその帝国が運命とも思われる限界を

(それは政治的、経済的なものであり、かつ文化的な限界だ)迎える
時代。
これからが作家・塩野七生の本当の正念場だと思う。
ふつうの歴史読み物としては「血わき肉おどる」とは言いかねるけど、
見守ってゆきたい。
 
ローマ人の物語〈11〉―終わりの始まり
タイトル:ローマ人の物語〈11〉―終わりの始まり
定価:\2,940
販売価格:\2,940
発売日:2002/12/11
著者:塩野 七生
出版社:新潮社
形態:単行本
在庫状況:在庫あり。
合計1,500円以上で送料無料!
※ 価格等のデータは日本時間 2009/08/14 05:00:11 時点のものです。

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