ローマ人の物語の本

ローマ人の物語〈6〉― パクス・ロマーナ

 
ゆっくりと急げ(2005/01/21)
 劈頭一番、私にアウグストゥスという偉大な人格を教えていただいたことに、著者へ最大級の感謝を捧げたいと思います。将にアウグストゥスという人は平凡という才能によってローマ帝国を400年の命脈ある、世界史上抜きがたい大きな存在に仕立て上げた一大立役者であるはずなのですが、前時代の華々しい英雄列伝の影に隠れて一般の歴史的な興味からは、たとえシェークスピアの影響があったとしても、思慮の浅いカップル、クレオパトラ・アントニウスの敵役としてぐらいしか認識されていないような状況は、あまりに不当としか言い様がありません。彼のようなゆっくりと、しかも確実な営為をなしたものこそが真にローマの礎であり、ひいては歴史を動かしているのです。ぱっと出てさっと消える類の英雄譚は確かに颯爽として痛快ではありますが、それが歴史の主軸であるかのような認識は限りない曲解を産み、歪な歴史観を生むことになるでしょう。著者は作家としての奔放さを旨に本シリーズを書き進まれていますが、決してこのような着実な努力を書き漏らすことはありません。まったくもってすばらしいことです。
 歴史とは本来人の歩みであるべきで、塊としての歴史の流れを強調する史観には同調しかねますが、方や英雄のための歴史でも無いのです。個人の力が歴史を変えることはよくある事といえども、それは他の無数の語られる事のない多くの平々凡々たる個人の日の当たらぬ努力の積み重ねがあればこそ、ということを無視しては何にもならないでしょう。アウグストゥスという人格はそんな無辜の人々の代表のように見えてなりません。40年の治世を淡々と多くを語ることなく成し遂げた彼は、著者が結びに引用している人々からの賛辞のように、歴史家を楽しませることを犠牲にして、つまり、後世の評価を無視して、同時代人のために働いた。このような人の一般的な評価はもっと高くてしかるべきです。
 
ローマはなぜ帝政を選んだのか? アウグストゥスはいかにして帝政の基礎を築いたのか?(2004/01/05)
カエサル死後の内乱を制し、初代皇帝として帝政を開始したアウグストゥスを描く。
本巻での読みどころは2点、(1)ローマはなぜ帝政を選んだのか? (2)アウグストゥスはいかにして帝政の基礎を築いたのか? 

当時のローマが執っていた執政官制度、元老院による寡頭政治という体制の限界や問題点については本巻以前の巻でもたびたび触れられてきたところであるが、直接民主制というある種、理想的な政治体制から帝政を選んだローマの選択はいかにしてなされたのか、影響、反動など俄然興味をひかれるところである。またカエサルさえ成しえなかったことを、内乱という騒乱を経た上ではあったものの、皇帝による統括という路線をアウグストゥスはいかに成し遂げていったのか・・・。

著者は本シリーズのそれまでの巻と同じく事柄をひとつひとつ事細かに記していく。内政、外交、政治的駆け引き、軍事・・・、社会の変化、文化等々。冒頭の2つの事柄についても,著者は事象を省略することなく記していく。とりあげられる事柄はひとつひとつ興味深いのだが、逆に細かい部分を漫然と追っていると、木を見て森を見ないことになってしまうかもしれない。
それにしても、材料を重ねていき、全貌を描いていく著者の記述スタイルの見事なこと! 知的好奇心が刺激される。
 
勉強になります(2002/02/15)
一見、前2冊よりは興奮の度合いが劣るか、とも思う。ただそれは、著者の筆力や情熱が衰えたわけでは無論なく、カエサルとアウグストゥス、さらに彼らを生み出した時代の違いということなのだろう。著者も再三述べているように、アウグストゥスは、興奮ではなく「人を感心させる」男だ。1巻から通しで読んでいる人はもちろん、大組織の「改革」と、何よりその「定着」を目指す全てのリーダーにとって、最良の教科書になるのではないか。
 
ローマ人の物語〈6〉― パクス・ロマーナ
タイトル:ローマ人の物語〈6〉― パクス・ロマーナ
定価:\2,835
販売価格:\2,835
発売日:1997/07
著者:塩野 七生
出版社:新潮社
形態:大型本
在庫状況:在庫あり。
合計1,500円以上で送料無料!
※ 価格等のデータは日本時間 2009/08/14 05:00:11 時点のものです。

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