ローマ人の物語(文庫版)の本
ローマ人の物語〈13〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(下) (新潮文庫)
この作品では、アントニウスとクレオパトラがダメな人間として描かれている。アントニウスは、軍団長としては有能だが政治センスがない人間として、クレオパトラは、教養はあるが統治者として現実的に行動できない人間として。これは、知らないなりに抱いていたイメージを崩壊させるのに十分だった。
自分で自分を冷静に見ることは難しい。アントニウスも、カエサルの下でとはいえ、十分な軍事的実績を積んだ人間。クレオパトラにしても、自分の美貌で国を取ったという自負がある。カエサル亡き後、ローマ世界を支配できると思ったとしても無理はないだろう。 しかし、現実は残酷だ。オクタヴィアヌスと対比されることで、政治的センスのなさを目の前に突きつけられてしまうのだ。
カエサル暗殺。カエサル好きを自認する塩野氏がこの場面をどのように記述するか関心がありましたが、極めて簡潔にカエサルの死の事実を記述するのみに留めており、意外な印象をもちました。書きたくなかったのかな?
本書の主題はむしろ、カエサルの死が何を引き起こしたか、誰にどのような影響を与えたか、という視点で、アントニウス、クレオパトラ、オクタヴィアヌスを中心に描いていきます。 世界史に暗く、もちろんシェークスピアすら知らない私にとっては、塩野氏が書くクレオパトラ側への記述が適当なのかは分かりませんが、歴史というのは同じ事柄でも勝者・敗者で見方が違うもの。常にローマ側(カエサル側)にたつ塩野氏の表現でも違和感なく楽しめました。 ちなみに、「ユリウス・カエサル」(文庫8〜13)は「ローマ人の物語」のなかで最高傑作だと思います。たった50年間の話なのにカエサル自身の波乱に満ちた人生をはじめ、キケロなど多くの名脇役が絡むストーリーはへたな小説を読むより圧倒的に面白いです。その理由を塩野氏自身が巻末の資料紹介で書いていますが、それがまた的確な指摘で説得力があるため、ますます読み返したくなります。
ユリウス・カエサルが暗殺されるのが紀元前44年3月15日。オクタヴィアヌスがエジプト遠征を起こしてアントニウスとクレオパトラを自殺に追いやりローマに凱旋したのが紀元前30年8月1日。それが本館の扱う内容である。
カエサルは、カエサル支持者に対しても、反カエサルの人に対しても、圧倒的な存在感を保持していた。輝かしい戦績、戦えば必ず勝つに違いないという信念。この武将がパルティア遠征を行って成功を収めたら王位についてしまうのではないか。そういう疑心暗鬼が高じて暗殺に至ってしまった。その後、ローマの主権は、アントニウスとオクタヴィアヌスの2人の間を行き来する。 アントニウスというカエサル股肱の武将の成れの果てには興味深いものがあったが、家庭では女に篭絡され、戦場では仲間を裏切って信用を失い、挙句の果てに愛した女に先立たれてしまった。自死を選ぶ勇気が残っていたことは不幸中の幸いだった。
本書でカエサルが死ぬ。
カエサルを熱烈に愛しているであろう塩野にして このカエサルの死はあっさり描いている。小説家として いくらでも書きようがあるであろうに。そんなあっさりした書き方にかえって 塩野の「悲しみ」が伺えるように思えてならない。 結局 カエサルは ローマという大版図の「グランドデザイン」を描いたところで この世を去ることになってしまった。カエサルが 後 10年でも生きていたら今の世界も変わっていたのかもしれない。 歴史にIFは禁物とは言うが。 カエサルの死後 オクタヴィアヌスが アントニウスを葬り去るところまでを本巻は語る。つまり そこまでがカエサルの描いたシナリオであったと塩野は言っているわけだ。 オクタヴィアヌスは そんなカエサルのシナリオに従い ローマの皇帝になった。 次からがオクタヴィアヌスが織り始める 物語である。
大まかな登場人物は、オクタヴィアヌス、アントニウス、クレオパトラの3人でこの周りをグルグル巡っていく。
著者の容赦ないアントニウスに対する才能の限界を唱える文章は読んでいて気持ちが良い。その評価が現実に沿っているかは別としても、女性とは男の才覚に対してここまでシビアになれるのかとついつい頬が緩んでしまう(私自身そういう女性が大好きだからだが・・・) その他の人物に対しても一刀両断的にバッサバッサと才能の評価をしていくのだが、同性のクレオパトラ相手になるとその色合いは、さらにねちっこく執拗になる。時代は違えど女性同士とは面白いもので文章や物語の上ですらうまくいかないものなのかと笑いたくなる。 2,000年の時を越えて、史実の中で自らの女性らしさをさらけ出してくれている著者に拍手喝采です。
ローマ人の物語(文庫版)の本ローマ人の物語〈13〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(下) (新潮文庫)
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