ローマ人の物語(文庫版)の本

ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上)新潮文庫

 
塩野さんの偏見。(2009/04/10)
地中海世界の覇権を手中に収めたポエニ戦役以降の
共和政ローマ社会の混迷を描いた上巻。
紀元前132年〜120年までの出来事。

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富裕層である騎士層の台頭。
大地主と小作人。
貧富の差の拡大。
無職層の拡大。

政治と経済の季節到来。

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農地改革、市民権改革を断行しようとする
グラックス兄弟。
二人とも実質的に権力を握る元老院に
殺害される。

グラックス兄弟の時代に明るいニュースは
あまり無い。
1990年代以降の日本社会のよう。

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いつまでも改善されない経済状況。
内乱が勃発。
無職層に職を与えるために、
軍人に給与を与えることにしたマリウス。
内乱は収まるが、戦争の無い時期には
兵隊は不要となる。
根本的な解決にはならず。

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この巻で唯一の明るいニュースに思えること。
ガイウス・ユリウス・カエサル(シーザー)の誕生。

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以下、抜粋。

『人間関係における義理人情の重要さを解さない、
 いや解そうともしない欧米のインテリ』

という箇所が、塩野さんの偏見が見えて
おもしろい。
 
重なる問題(2008/05/06)
 地中海の制海権を確保した共和制ローマ。急速に勢力圏が広がるにつれて、逆に国内に問題を抱え込むことになった。そのひとつが富の格差問題である。ローマ人は農耕民族であるため、多くのローマ人は農業を行っている。この小規模農業が立ち行かなくなり、低所得層に落ちる市民が発生してしまったのである。この原因は大きく2つ挙げられる。
 一つは領土が拡大したことにより、安価な農作物が輸入されるようになったこと。もう一つは領土拡大に伴い獲得した奴隷により、大規模農業が行われたことである。この貧富の格差拡大は、ローマの戦力低下を招いてしまった。兵役はローマ市民の義務であるため、従軍中の賃金は支払われない。このため、従軍中に残された家族が生活できるだけの資産を持たない市民は、兵役の義務を免除されるのである。
 勢力を拡大するほどに混迷の度合いを増していく姿は、いまの日本に重なる部分もあるかもしれない。
 
それでも改革は進んだ(2008/01/14)
 社会構造が変わって社会に矛盾が生じれば、政治による改革が必要になる。政治による改革には必ず既得権者による反対が伴う。それを乗り越えられるかどうかが、その社会の存亡を決めることもある。

 グラックス兄弟による農地法の改革は、実は内容面での反対はそれほど大きくなかった。問題視されたのは、彼らのやり方だった。

 正しいことを正しいと信じてやるだけでは改革はできない。大きなことを成し遂げるには、清濁を併せ呑むくらいの程よい器用さ、鈍感さが必要なんだなということを感じた。

 そういうことはともかく、ローマ人は、ローマ人同士やこれまでの同盟者たちと多くの血を流した挙句に改革を始めた。すごい民族だなあと思う。
 
改革者グラックス兄弟の悲劇(2007/10/10)
宿敵カルタゴを滅亡させ地中海を制覇したローマ。
長い戦いを終え絶頂にみえたその栄華のウラで、貧富格差の拡大や属州の市民権問題など、既得権をめぐる内政面の問題が、じわじわとローマを蝕んでいきます。
本巻では、既得権を守ろうとする元老院階級に立ち向かい改革を進めようとするティベリウス、ガイウスのグラックス兄弟の時代を取り上げます。
約10年をおいて執政官として改革に取り組んだ2人の兄弟は、それぞれ活躍する期間は数年にも満たず悲劇的な死を遂げますが、(当時は毀誉褒貶が激しかったものの)後世からは正当な評価を受ける改革姿勢とローマの発展への貢献により、歴史に名を残します。いつの時代も改革者はその時代には正当な評価を受けにくいのでしょうか。
塩野氏は「無知な大衆はそれが政治目的であっても(権力者の)私利私欲のためと思い込むのが好きな人種」という学者の言葉を引用していますが、主権者たる国民が本当の改革者を見分ける能力を持たねばならないということは現代にも通じる示唆と思います。
塩野氏の文章は、史実を客観的に語るだけなのに、現代社会への示唆や教訓を決して押し付けがましくなく表現していて、歴史物語を楽しませながらも今という時代を考えさせる内容となっています。
なお、本書後半は、時代が下って紀元前89年、内乱を契機として属州にも市民権を与えることになりローマ連合は解体、都市国家連合から真の国家へと変貌することになりますが、まだローマ国内外の「混迷」は続きそうな雰囲気で、物語は下巻へと引き継がれていきます。
 
勝者の混迷 ピッタリのタイトル(2007/08/13)
あれだけの戦果を挙げ、怖いものがなくなったかに見えたローマだったが内部にはくすぶる火種が満載だった。紀元前の世界がここまで発達していて組織を機能させる力を持っていたことに前作まで驚いていたが、その同じ国とは思えない蛮行がローマ国内で繰り返される。
そして今までにない内政的な著者の指摘も見逃せない「多くの普通人は仕事をすることによって、自らの尊厳を維持していく。人間が人間らしく生きてために必要な自分に対しての誇りは、福祉では絶対に回復できない。」「同じ権利を持たないものに、同じ義務を求めることは出来ない。同等の義務を負わせたいならば同等の権利を与えねばならない。」「絶望にかられた人々は容易に過激化に走る。そして常に中心にいる人よりも周囲を固める者たちのほうが激しく対応するようになるものである」
確かにその通り。歴史から学ぶことは本当に多い。華やかさに欠ける時代を描ききる手腕は凄い。
 
ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上)新潮文庫
タイトル:ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上)新潮文庫
定価:\420
販売価格:\420
発売日:2002/09/01
著者:塩野 七生
出版社:新潮社
形態:文庫
在庫状況:在庫あり。
合計1,500円以上で送料無料!
※ 価格等のデータは日本時間 2009/08/14 05:00:10 時点のものです。

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