沢木耕太郎の本
オリンピア―ナチスの森で
良くも悪しくもオリンピックを史上最高のイベントとして認識させた「大会」である。イベントの仕掛け人としては超天才のアドルフ・ヒトラーがこれまた天才のレニ・レーフェンシュタールを起用して、ドイツ第3帝国の威信にかけて成功させようとする様々な仕掛けとこの大会に2ヶ月もかけてこれまた国家の威信をかけてやってきた日本選手団。彼らも当時の世界情勢の中で日本国家ここにありという存在感を見せ付ける必要があった。こんな国家としての立場と個人としてオリンピックに出場するスポーツマンとしてのそれぞれの葛藤が時代を反映している。これはもともと新聞に連載されていたと思うが東京オリンピックの話も面白かったと記憶している。ボブ・ヘイズやヘンリー・カーやフィゲロラなどシリーズで出版されないのかな。
沢木耕太郎の本を最後に読んだのは、7,8年前。『深夜特急』だった。久々に彼の本を手に取ったが、その筆力は素晴らしい。冒頭は、沢木がベルリン・オリンピックの映画を監督し、90歳となったレニ・リーフェンシュタールに会う場面だった。レニがまだ生きていることの感動が、そして彼女と握手した沢木の感動が、電流のように真っ直ぐと伝わってきた。
この作品は、感情的に強いだけではない。日本国民にとって、映画にとって、そしてレニにとってベルリン・オリンピックとその映画が何だったのか、ということを知的にもきちんと沢木なりの切り方で分析してある。 文句なし。 さあ、あなたもオリンピックを形作る人の輪の中に、ワープしてみませんか。
日経新聞に連載されていたものに大幅加筆されたもの。戦前、日本からベルリンに行くまで2ヶ月もかかったという。期待され国辱ものになった選手、健闘がドイツ人に人気になった選手、植民地時代の韓国から出場した選手…
どれもこれも、スポーツとは何か、日本人とは何か、民俗とは何か、を考えさせるドキュメンタリー。前畑秀子の章は特に感動。 『オリンピア』はシリーズ化される予定で、新聞には100Mスプリンターたちが連載されていたが、次回作の刊行が待ち遠しい。
1936年(国内では2.26事件が起きた年)に開催されたオリンピック・ベルリン大会を、ドキュメンタリー映画「オリンピア」の監督レニ・リーフェンシュタールや当時の日本代表選手への取材を通して詳しくまとめた本。私にとってベルリン大会は、ナチスドイツ政権下で行われた大々的なオリンピックで、ナチスのプロパガンダに使われたのではないかという疑問も呈されていて、一方で前畑秀子が水泳で金をとった大会で、映画「オリンピア」が高い評価を得た、というくらいの知識でした。本書は、多くの取材を通して、日本あるいは日本選手の視点から見たベルリン大会が豊富に記述されています。選手の当時の心情、体験、悲喜などがいききとまとめられています。これにレニ・リーフェンシュタールへのインタビューが加えられて、この大会が総括されています。その他にも、写真電送技術と国際電話の実利用による国内新聞社の競争や、ベルリンオリンピックから初めて設営されることになった選手村などのエピソードも興味深い。
沢木耕太郎の本オリンピア―ナチスの森で
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