春江 一也の本
カリナン (集英社文庫)
他の作品同様、地図上やニュースなんかでしか知りえなかった土地をより深くリアルに描いている手腕は、まったく見事としか言いようがないです。しかしストーリーはちょっとトントン拍子に進みすぎる気がしました。テンポがいいので読みやすいのだけど、いくら祖母の恋愛に感化されたとはいえ、21歳の女性が50代の外国の男性をそうすんなりと恋愛対象に考えるだろうか???駆け足でフィリピンと日本の関係を知るにはいい作品だが、ちょっとストーリーに重みがない感じがしました。
「プラハの春」「ベルリンの秋」「ウイーンの冬」とは違い、
残念ながら主人公が彼自身ではないので、イマイチ感情移入できない部分もあり、 前述の3作のように政治情勢が絡んだ恋物語ではないため、 イマイチ感はぬぐえないのだが、日本軍が残した過去の財宝をめぐる謎という、 1つのフックがあり、まあそこそこは楽しめる。 前半の前置きが間延びした感があり、中盤から結構おもしろくはなるが、 後半はあっけない感がある。
社会事情が多く描かれていて読み応えがある。やはり知らないことを知るのは楽しい。特に社会背景を書くのが上手い。
が物語は上手くない。他の方のレビューでもあったようにもっと社会派で書いてもらいたい。そうすれば本の質が格段に上がると思う。
最近、ニュースの特集でフィリピン残留孤児の肉親探しのニュースを見た。彼らの多くは社会的・経済的に恵まれておらず、苦しい生活を強いられており、本書で描かれるストリート・チルドレンと重なった。
主人公は、太平洋戦争終戦時に日本へ帰れた幸運な一人。彼が、当時「イナ(母さん)」と呼んでいた女性を捜しにフィリピンへ出かける。その地でストリート・チルドレンの悲惨な状況を目の当たりにして・・・と、ここまでは、社会派っぽい。これに、その女性の孫娘と主人公との恋愛が絡むのだが、その描かれ方は唐突で不自然な印象。より劇的にしようと欲が出たのか、どうにもあざとさが鼻につくのが残念。 『プラハの春』や『ベルリンの秋』でもそうだったのだが、社会情勢・地理の綿密な取材・描写と、恋愛の不自然な成り行きとの間のギャップが作品のデキを落としているように思う。もっと社会派なままで仕上げた方が良かったのでは、と思うのだが。
春江 一也の本カリナン (集英社文庫)
話題の本、ロングセラー特集 |
リンク |