井上 雄彦の本
バガボンド―原作吉川英治『宮本武蔵』より (19) (モーニングKC (945))
小次郎はここでも生き残るというこおはもうわかっているからこそ、手を抜かずどのように強くなっていくかが丁寧に描かれています。このマンガの好きなところは着られる者にも人生がある、にもかかわらず惨めなくらい圧倒的な二人の主役の前にばたばたとたおされていく。
結果よりも過程を、主人公よりも周りの人々のことが気になります。
武蔵が主人公と思いきや、主人公は二人いた。これから読む人はまず14巻〜20巻を読んでから1巻に戻ると面白い。そうすれば、その人にとっては佐々木小次郎が主人公になる。
伊藤一刀斎は「わしになれ!」と残党狩りの百姓がうようよする中に小次郎を一人置き去りにする。幾度とない死線を潜り抜けながら、小次郎は臆病を知る。小次郎は臆病を知り、故郷の親を想う。 そんな時、西軍(石田三成側)の残党、定伊(さだこれ)、新二郎、巨雲(こうん)、市三と出会う。定伊は小次郎を見つけ、やり過ごせないと感じ、巨雲らを先に行かせ、小次郎と戦う。 小次郎を圧倒する定伊。小次郎の刀を奪って勝利を確信する。しかし小次郎の臆病さが定伊に勝る。 伊藤が小次郎に課した「臆病」とは? 「臆病」⇔「慢心=油断」か。
下の言葉は19巻に載っていた好きな言葉です
死の際を知り、臆病になり なおかつ臆病を超えて 前へ出て行く勇気 それが強さ・・・・ 臆病と強さは相反しない 強い人と聞くと、 度胸があって、臆病ではないイメージがします。 しかし、本当の強い人はそうではないのではないでしょうか? 誰だって、怖い時があります。 でも、強い人と普通の人の違いは そこで、その恐怖を跳ね除けようと努力するところにあります。 そのようなことが19巻の小次郎の姿に表れていました。
小次郎のなんたるかを見事に描き出しています。吉川英二原作の宮本武蔵に出てくる佐々木小次郎からイメージするのは、雄弁で計算高い部分や卑劣で残忍といったマイナスイメージがまずあって、しかしそれを全部帳消しにして余りある剣の才能が人物そのものの魅力として成立していて、人格者でもある武蔵とは対照的に描かれているという印象ですが、本作品における小次郎は言葉をもたないために、人間性がベールに包まれています。剣の才能が人物そのものの魅力として描かれている点で共通していますが、言葉を発しないので読者は直接的に感情を知る事が出来ず、ますます小次郎という人を知る手がかりとしての戦いぶりから目が離せません。武蔵は剣によって人格形成をして行きますが、小次郎にとっては剣で戦うという事がアイデンティティであり、人格はむしろ二の次になっています。だからこそ、武蔵に負けてしまう運命が非常な悲しさを増幅させてくれます。武蔵は仮に小次郎に負けても人格には傷はつきませんが、小次郎には剣で負けてしまう事はアイデンティティそのものの危機です。巌流島の戦いが宮本武蔵という作品のクライマックスとして印象深いのは、武蔵にとって最大の敵を倒した戦いだからではなく、佐々木小次郎という一人の天才剣士がそのアイデンティティを失った戦いだからだと思います。その意味で巌流島の戦いにおける主役はまぎれもなく小次郎です。話が脱線してしまいましたが、要するに「バガボンド」でどんな巌流島の戦いが描かれるのか楽しみでなりません。それくらい小次郎のもつ魅力が見事に描き出されています。
小次郎が壮絶な戦いを繰り広げる19巻では
彼の精神面の描写が際立っている。 本編は戦いの連続だが、息もつかせぬスピーディで 臨場感のある戦いぶりは最初から最後まで 一気に読ませる力がある。 早く続きが読みたい!!
井上 雄彦の本バガボンド―原作吉川英治『宮本武蔵』より (19) (モーニングKC (945))
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