井上 雄彦の本
バガボンド―原作吉川英治『宮本武蔵』より (11) (モーニングKC (763))
概要:
全世界で1億部を売り上げた『SLAM DUNK』の作者井上雄彦氏が 歴史小説界の巨峰・吉川英治氏の創作小説 『宮本武蔵』 を元に 大胆なアレンジを加えて作り上げた剣豪漫画。 基本的な設定と大筋は原作通りだが、実際の内容は別物といっていいものになっている。 内容: 09〜11巻まで続く『柳生編』の最終巻。 剣聖石舟斎と対峙した武蔵と柳生編のエピローグ、おつうの旅立ち、 親族と別れた又八による梅軒編のプロローグが収録されている。 真の無双と出会う事により、自分の知るもう一人の無双・当理流新免無二斎の小ささを知る武蔵。 父を嫌悪しながらも、知らず知らずのうちに父と同じ道を歩んでいた彼はようやくその呪縛を脱する事になる。 そして石舟斎の言葉により、自らが執着していたものが空疎な概念に過ぎない事を知った事で、 彼の探求の旅はアンチテーゼによって道を塞がれ、葛藤の中新たな止揚へと向かう事となる…。 所感: 石舟斎と武蔵のやり取りは、神秘的で文学的ではあるが、井上氏が伝えたい物事に表現力が追いついていないというか、 寝転がっている老人相手に武蔵が勝手に驚いて勝手に畏まっているようで、傍で見ていて滑稽と言う他ない。 上泉伊勢守に宗厳・胤栄が圧倒された時のような、読者を納得させるに足る説得力が不足している。 また、結局序盤であれだけ持ち上げた柳生兵庫助は武蔵と戦う事なくそのまま柳生編が終了してしまうが、 原作を大きく改変し、武蔵と胤舜との戦いとその勝敗までも「秘史」の一言で片付けてしまった本作なればこそ、 歴史には存在しない (ただし武者修行の旅の途中で対面した事はあるらしいが) 武蔵と兵庫助との戦いを描いてほしかったところ。 実力的にパッとしない四高弟の対決はどちらも明確な勝敗が描かれる事なく武蔵の逃亡で終わってしまっただけに、 加えて彼との戦いも描かれなかったのは消化不良、カタルシス不足の感が否めない。
遂に武蔵は石舟斎と対峙した。病床に伏せる石舟斎に怯える武蔵。それはまさに胤栄に出会った時と同じ感覚だった。
胤栄が海なら、石舟斎は山。彼らの世界は無限。それに対し、父・無二斎は天下無双を名乗るために海や山を彷徨う世界の狭い人であったと知る。万人を恐れてただ闇雲に自分の力を誇示する人。自分の子供にさえ恐れを感じるちっぽけな人。 「天下無双とは?」 と武蔵に問われ、石舟斎は答える。 「天下無双とはただの言葉」 胤栄は胤栄、石舟斎は石舟斎、武蔵は武蔵。 武蔵は城太郎とおつうを柳生に託し、ただ一人、修行の旅に出る。しかし城太郎とおつうは柳生家を後にし、武蔵の後を追う。
この巻で柳生の凄さを思い知ります、武蔵だけではなく。
石舟斎の言った、我が剣は天地と一つがとても考えさせられます。 また、これを石舟斎に言った伊勢殿というのがどれほど凄い人なのか気になりますね。
ついに柳生編も佳境をむかえることになりました。息をもつかせぬ、圧倒的な描写力で、まるで自分がその場にいるような感じさえ起こってきます。十分楽しめる一冊です。
井上 雄彦の本バガボンド―原作吉川英治『宮本武蔵』より (11) (モーニングKC (763))
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