井上 雄彦の本
バガボンド―原作吉川英治「宮本武蔵」より (9) (モーニングKC (736))
概要:
全世界で1億部を売り上げた『スラムダンク』の作者井上雄彦氏が 歴史小説界の巨峰・吉川英治氏の架空小説 『宮本武蔵』 を元に 大胆なアレンジを加えて作り上げた剣豪漫画。 基本的な設定と大筋は原作通りだが、実際の内容は別物といっていいものになっている。 あらすじ: 09〜11巻まで続く『柳生編』の第1巻。 胤舜との死闘を終えた武蔵の次なる標的は、興福寺からそう遠くない位置にある 大和國柳生藩の主、柳生石舟斎であった。 石舟斎との立ち会いを望む武蔵は、堅固な城内に侵入するための一計を案じ… 所感: 導入部であり人物描写やキャラ同士の掛け合いからなる「静」とクライマックスであり戦闘描写の「動」からなる バガボンドの、「静」の巻。(概してこの作品は「静」の方が面白い) 既存のボロ布から武芸者らしく服装が改まり、武蔵の心に余裕が生まれたせいか、 宝蔵院編とは違い、全体の雰囲気が柔らかく穏やかなものになっている。 加えて荒武者の集まりでありながらアットホームな雰囲気のある柳生の高弟たち、 5巻振りの登場である吉岡伝七郎、登場するだけで華があるおつう等 多彩な人物が登場し誌面を賑やかにしている。(更には井上氏の絵による信長、秀吉、家康までも登場する) 芍薬の切り口に非凡なる才能を見、それを契機に小柳生城に招かれるエピソードは、 文学的かつセンシティブで美しい。 しかしそれはあくまで表層の事で、城内に進入した途端武蔵の紳士的な態度が一変する。 客観的に見れば所詮彼は己が上に進むためだけに柳生の勇名を踏み躙り、 名君に治められた平和な里を乱しに来た、ただの暴力の押し売りであるに過ぎない。 また一国の王とも呼べる人物が飼育していた犬を勝手に撲殺した挙句、それを契機に 乱闘を引き起こすという展開は粗野かつ強引で洗練にほど遠く、 前半の美しさと穏やかさに見出されていた美点を全て吹き飛ばす結果となったのは残念。
武蔵は次の標的に天下無双・柳生石舟斎(柳生宗厳:やぎゅうむねよし)を選ぶ。
その頃、柳生石舟斎は、最愛の孫・兵庫助の帰りを待ちわびていた。石舟斎は「遂に石の舟は浮かばず」と、柳生が誰にも仕えなかったがために今まで恨まれず滅ぼされず、今その結果として莫大な資産を後継者であり孫である兵庫助に残せることを、孫同然に可愛がるおつうと共に喜んだ。 柳生には、武蔵と時を同じくして、そして武蔵よりも一刻早く、吉岡伝七郎が訪ねていた。石舟斎は伝七郎の訪問に対し、おつうに芍薬の花をもたせて「これを渡して断ってくれ」と言う。伝七郎は花は自分には似合わないと花を受け取らずに帰る。偶然その花は武蔵の元へやってきた。武蔵は茎の切り口を見て「この非凡な切り口は誰の業か」と柳生に手紙を送る。この手紙に興味を持った柳生四人衆(四高弟)は武蔵を城に招く。 武蔵の再三の挑発にも柳生四高弟は乗らず、武蔵の思惑通り石舟斎を引っ張り出すことはなかなかできない。しかし、城太郎が柳生家の犬を殺したことから、武蔵の一人対一城の合戦が始まる。 相変わらず画が美しい。この漫画は芸術です。
最後の城太郎のこのセリフが好きです。まだ幼いながらさすが「鬼の子」と言われた武蔵の弟子だなと思いました。
鍛え抜かれた体とまっすぐで強い意志を持った武蔵。最初は刃物のように鋭く尖っていたけれど、回を追うごとに人間らしく男らしく成長していく姿に惚れ惚れします。男には死ぬ気で挑んでいくけれど、女には弱くて時々照れたりするのがかわいらしい一面です。今後、お通との進展に注目ですが、武蔵のような人に惚れられたお通が少しうらやましいです。
原作を読んだり、映画を観たりした当時、この作品は極めて上質なラブストーリーだと感じました。
なぜなら、お通のひたむきさやけなげさ、しとやかさに「なんとか一刻も早く思いを遂げてもらいたい」と、心せかれる思いで読みふけったりしたからです。 もちろん、剣をきわめる武蔵の成長する描写も血肉沸く思いがあり、そこだけ見つめてもすばらしい作品でしたが、なんというか・・もうすこし、古風な女 をというのではなくて、今回のお通のようなお茶目な子もとても良いと思いますので、男と女の微妙な絡みも随所にちりばめてほしいと希望します。
井上 雄彦の本バガボンド―原作吉川英治「宮本武蔵」より (9) (モーニングKC (736))
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