井上 雄彦の本
バガボンド―原作吉川英治「宮本武蔵」より (7) (モーニングKC (702))
何に対しても攻撃的な武蔵。その上手く言い表せれない不安を高名な僧である沢庵に言い当てられる。
村人に放った悪行の償いとして罰を受ける武蔵。 その一瞬、一瞬によぎるものは「死」であった。 その身勝手な考えを根底から見直す事で武蔵は新たな再出発を迎える。 この巻で同じく峻峭な過去を背負っている辻風黄平と一回目の死闘を繰り広げる。 次に相対する時は、互いに己の傷を負い成長しそして、どちらかが戦いの世界から身を引くことになる。
『生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、
死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し』 (空海 『秘蔵宝鑰』 沙門遍照金剛撰) 全世界で1億部を売り上げた『スラムダンク』の作者井上雄彦氏が 歴史小説界の巨峰・吉川英治氏の創作小説 『宮本武蔵』 を元に 大胆なアレンジを加えて作り上げた剣豪漫画。 基本的な設定と大筋は原作通りだが、実際の内容は別物といっていいものになっている。 本巻はバガボンドに限らずSLAM DUNKやその他作品を含めた井上雄彦氏の作品中、 最高傑作であり究極到達点とも言うべき出色の出来である。 大和國興福寺は宝蔵院流槍術の天才・胤舜に敗北し、春日山中で再戦の為に修行を積んだ武蔵。 決戦前夜と、その死闘までが描かれている。 正直言って本巻は、武蔵と胤舜の深更の戦いを扱ったものであるにも関わらず、 僅か一合たりとも剣を打ち交わしはしない。 にも関わらず、この懸崖の淵に立つが如き死への恐怖感、抜き身の刃を突きつけられたような緊迫感、 そして万巻の戦記を積むよりなお饒舌に互いの争覇を描き出した無言の対峙はどうか。 森厳なる山林、濃密なる深闇、悠久の彼方より人々の営為を見下ろす降るような星辰。 巨いなる霄壌の間、心を寂にし、生と死を分かつ戦いを超えて見ゆるものは、人間なるものの卑小ささと自然の悠久さ。 それは決して見ゆる事なく、人知において捉うる事もできず、しかし万物を貫く永遠なる存在『道(タオ)』である。 中国の古典を題材とした中島敦氏の『名人伝』という作品があり、そこでは天下第一を目指す弓の名人が 終に辿り着いた境地こそ『不射の射』であるという事が描かれている。 弓術に限らず中国拳法は、技を研鑽し相手を倒すなどの表層的な行為は目的のために手段であるにしか過ぎず 悉く天地万物との合一、即ち『道』を知り、『道』を見、『道』そのものとなる事を最終到達点としている。 仏教で言えば人牛倶忘、融通無碍の境地であり、そこには武器も技術も、知も慾も肉体も、『我』ですらも一切が不要なのである。 それはバガボンドが題材とし、武蔵が極めんとしている『剣』の道に於いても例外ではない。 本巻では死闘を遮るかのように唐突に剣聖・上泉伊勢守信綱のエピソードが語られ、 剣術の最高到達点は『無刀』であると示されるが、それこそこの『不射の射』の境地に他ならない。 これにより作者は今後武蔵が登攀する事となる剣の道の険しさ、深さ、到達点の高さを示唆し、 同時に上泉公の如く天地に溶け込み、自然体で対峙する武蔵の大きさ、成長を描いたのだろうが、 バガボンド全体からみれば中盤にも至っていないこの巻で、 いきなり結末とも言うべき回答を持ち出してきてしまったのはいささか拙速であった気がする。 いずれにせよ、本当に素晴らしい一冊だが、あまりにも本巻の出来が良いがため、 以降の話が総て駄作に見えてしまうのが本当に残念である。
子供の頃から父親・新免無二斎に強くなることを強いられてきた武蔵。凶暴そのもの。捕らえようとする村人を悉く殺す。山に隠れた武蔵を捕らえるために多くの村人の命が犠牲になった。そんな状況をみかね、坊主・沢庵が武蔵捕獲に乗り出す。沢庵はおつうを連れて山に入る。味方なき武蔵。会う人間はみんな敵。村人、辻風黄平、..次々と武蔵の命を狙う。疑心暗鬼の中、山でおつうと再会する。抱きついてくるおつうに武蔵の殺気は消える。武蔵は幼馴染のおつうによって遂に捕らえられた。
沢庵によって木に吊された武蔵は「殺せ」とばかり考える。生きる意味を見出せない武蔵。人を殺すことしか生きる目的を知らない武蔵に対し、沢庵は別の生きがいを与える。
学生時代からバカボンド&スラムダンクは超大好きなのですが、バカボンドは特に7巻が好きです。上泉秀綱が柳生雪舟斉、宝蔵院胤栄に対して「ならば剣とは?」という問いのシーンあたりでは何回読み直しても涙が出てきてしまいます。
さっき電車の中でたまたま読んでいたのですが、三十路を過ぎた今でも不覚にも涙を流してしまいました。 彼らにとっての「剣」は僕にとって、仕事や事業や経営です!
井上さんの漫画はいつも面白いからスゴイ。この人にハズレやスランプはありません!!
全然漫画とは関係ないのですが、2巻の表紙の武蔵がジーコ・ジャパンの試合中で殺気立っている鈴木選手に似ていると思うのですが・・・。
井上 雄彦の本バガボンド―原作吉川英治「宮本武蔵」より (7) (モーニングKC (702))
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